あにめマブタ

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考察

『ぼっち・ざ・ろっく!』3話:終始、繋がれない手の演出。あと「音楽」を演出すること

2020年に、当時の「まんがタイムきらら」グループ統括の編集長が『ぼっち・ざ・ろっく!』について話している記事がある。編集長は本作を、意識的に尖った作品を多く掲載している「まんがタイムきららMAX」の代表格であり、読者の中でも「次に来る作品」と思…

大場ななが電動ドリルで作っていたものの正体。(『劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト』)

ここに来て、更に観客の裾野が更に広がりつつある本作だが、 この記事では『劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト』の 「大決起集会」での描写に絞って、大場ななの本作における役どころについて考えたい。*1 www.youtube.com 【以降、ネタバレ】 *1:以降、…

【作品読解】トマトとは、列車とは、ヒヨコとは、ワイルドスクリーンバロックとは、そして舞台少女の死とは。(『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』)

勢いが止まらない、いや加速しつつある。『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(2021)は 2018年放映のTVシリーズから始まる流れの大きな結実だ。 と同時に、エネルギーと存在感の原液を浴びせかけられるような 独自の映画体験を作り出す、巨大で異形の…

『TENET テネット』感想、4重の○○(ネタバレあり)

テネット、俺はテネットの話がしたいわ…。IMAXで観る『TENET テネット』、 冒頭の引き込まれ具合はちょっと怖いくらいじゃなかったか? 自分がおかしくなったのかと思ったよ。ファーストカットはコンサート会場。指揮棒カンカン→静寂…からのテロ発生! 「ア…

観た人の9割が知らない、透明人間の本当の正体(映画『透明人間』(2020)感想)

映画『透明人間』(リー・ワネル監督)、観ました。 結構、落ち着いた邦題だなと思ったら、本当に『透明人間』(1933)のリブートらしいですね。 全体的にソリッドな仕上がりで、 たとえば『ターミネーター2』を思わせるモンスターものとしてもパワーのある作…

キャラクターの生まれる渚(TVシリーズ『SHIROBAKO』の映像・音響演出)

この記事は、2015/8/14のコミックマーケット88で頒布された 『アニメクリティーク vol.3.0 特集 蟲・生物・人工物/アニメにおける〈音〉』 に寄稿した文章「キャラクターの生まれる渚(『SHIROBAKO』の映像・音響演出)」を再録したものです。(一部、ブロ…

たつき監督のキャラクター演出と、赤い木の悪魔的なデザイン(『ケムリクサ』最終話)

毎クール、最終回をリアルタイム視聴したくなるアニメが1~2本出るんだけど、『ケムリクサ』はそれでしたね。 界隈の盛り上がりに押されて、最終話放送週の日曜日に配信で追いついたクチだったんだけど、すごく楽しませてもらえた。これはみんなの語り草だ…

あなたは死体を埋めたあとの人間の肉声を出せるか(声優さんの芝居の上手さについて)

【目次】 声優さんの芝居について語るのは難しい 「リアル」な芝居=「っぽさ」の救い上げ 声優、黒沢ともよ 自分が声優なら、どう演技するか? 「応援してるよ」 麗奈の心情に寄り添った久美子の芝居 久美子と麗奈は、山中に死体を埋めた共犯者である 上手…

真夜中と日差しの夢 ~『アイカツ!』神崎美月の5年3ヵ月~

目次 真夜中の時代 美月の性急な夢 美月の発言のねじれ 同じだけど、確実に違う空 美月といちごの違えた道 78話の衝撃 みくるが見出した美月 101話を終えて美月に残った夢 「あなたに奪われたいの」 1人の人生は1人分の人生では足りない アイドルの輝…

日常系とはなにか ~死者の目・生を相対化するまなざし~

本稿は「第二十一回文学フリマ東京」2015/11/23で頒布しました同人誌『多重要塞 vol.4』に収録された文章「日常系とはなにか ~死者の目・生を相対化するまなざし~」を改稿したものです。 はじめに 「日常系」とは、描かれているもの自体ではなく、描かれ方…

田中あすかという感情の獣(『響け! ユーフォニアム』2期)

田中あすかとは何者だったのか 「田中あすか」というキャラクターは、『響け! ユーフォニアム』TVシリーズ第2期を貫く太い「心棒」であった。結局のところ、田中あすかは黄前久美子という、未曾有に強力な主人公の格さえ「食って」しまったという風情ま…

アニメ演出上のサプライズの最高のサンプル (『アイカツスターズ!』15話)

目次 『アイカツスターズ!』第14、15話は必見 第15話のシーン1に至るあらまし シーン1:真昼が自主レッスン中に気を失う シーン1:なぜこれは映像上のトリックなのか 第15話のシーン2に至るあらまし シーン2:真昼を迎えにいく夜空 シーン2:長尺の感…

赤いリボン・目玉焼き・渡り廊下 ~ 『魔法少女まどか☆マギカ』TV版の構造解析~(23000文字)

目次 はじめに(この文章のねらい) 方法1:一見、意味のないシーンが存在する理由を考える 方法2:作品は「反対意見」に応えなければならない 『魔法少女まどか☆マギカ』第1話 Aパートへの着目 ◆第1節◆ TVシリーズの3ブロック構成の確認 物語とは主…

話数ラスト30秒が超絶かっこいい! ~『コンクリート・レボルティオ』1、2話~

ストーリーの葛藤をラスト30秒に集約する手法 『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』は、今期放映されている中でも「次どうなるんだ!?」の魅力に、特に長けているアニメだ。 本作の舞台は、神化40年代という偽史的な昭和だ。そこには、ウルトラ…

『SHIROBAKO』の音響演出について寄稿しました(アニメクリティーク新刊(C88))

アニメ批評同人誌「アニメクリティーク」に寄稿しました 明日、8/14(金)に開催される、第88回コミックマーケット(1日目)のスペース東フ36aにて、 アニメ批評同人誌、アニメクリティークの新刊 『アニメクリティーク vol.3.0 特集 蟲・生物・人工物/…

μ'sはどこに戻ってきたのか ~『ラブライブ!』劇場版で、ふと悲しくなった~

『ラブライブ!』劇場版の複雑な悲しさ にこまきながら(遅まきながら)『ラブライブ!The School Idol Movie』を観てきました。 特に前半には難しいレイアウトで良い芝居をさせるカットが頻出したほか、ダンス中のカメラワークを作画で行うカットも多く、劇…

吉川優子の、流すはずじゃなかった涙について ~『響け! ユーフォニアム』11話~

優子は何に泣いたのか TVシリーズアニメ『響け! ユーフォニアム』、これはとんでもない作品だということで、周囲のざわつきが止まらない。かくいう僕も、最新話である第11話を観たあと「北宇治まで五体投地したい」とツイッターに取り急ぎメモしたほどだ。 …

劇場から彼女にハローと呼びかけること ~『血界戦線』OP/ED分析~

『血界戦線』OP/EDを読む 各30回ほどは観ているだろうか、というのは、4月から始まったTVアニメシリーズ『血界戦線』のオープニング、エンディング映像のことである。 ともに松本理恵監督が絵コンテを担当した2本の映像には、いくつもの物語上のヒ…

読者の心を殴る強さを最大化する技術 ~『惑星のさみだれ』の凄み~

今日、『惑星のさみだれ』を読もう みんなが「これはすげぇぞ、読め」と、格闘家みたいなことしか言わないことで有名な漫画『惑星のさみだれ』(水上悟志、少年画報社)が、5月一杯(明日の夜中)まで無料配信されている。 この記事では、本作が「すげぇ」…

完璧なエンドマークを見た ~『劇場版 境界の彼方 未来編』感想~

本当なら締めの言葉になるんだけど、最初に言っちゃいます。 TVシリーズを最後まで観て、気に入った人なら、本当に最高の体験ができると思います。ぜひ、劇場へ足を運んでみてください。 この記事は、『劇場版 境界の彼方 -I'LL BE HERE- 未来編』のインプ…

武内Pの視界 ~『アイドルマスターシンデレラガールズ』第1話のキャラ描写~

彼のような人を「イヌ系」とでも言うのだろうか。 TVアニメ『アイドルマスターシンデレラガールズ』第1話の放映後、話題をさらったのは、武内駿輔さん演じる、役名「プロデューサー」、人呼んで「武内P」の異形のキャラ造型である。 彼は200人弱がひしめ…

『楽園追放』は3DCG表現を逆手に取った演出に注目

どうも。ヒグチです。 『楽園追放』について、インプレッションな感想記事を残しておきたいと思って書いてます。 次のセクションから完全に【ネタバレ】していくので、気をつけてください。楽園追放 Expelled from Paradise【完全生産限定版】 [Blu-ray]出版…

あなたを見つけて砂漠を抜け出すこと ~『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』を今考える~

『少女革命ウテナ』 というアニメがある。今から17年前、1997年の4月から12月にかけて放映された全39話のオリジナルTVアニメシリーズだ。 監督である幾原邦彦のもとに結集した若いスタッフ(のちに第一線級のクリエーターとなる人々ばかりだ)が作り上…

『ラブライブ!』1期のストーリー構成分析(映画脚本の観点から)

※以下、同人誌に掲載した文章の再録の後半となります。後半は7000字で、前半で確認した三幕構成の要素を応用し、『ラブライブ!』1期のストーリー構成について分析します。 前半:30分でエッセンスを掴む! ストーリーの黄金率「三幕構成」 - あにめ…

30分でエッセンスを掴む! ストーリーの黄金率「三幕構成」

※以下、同人誌に掲載した文章の再録の前半となります。前半は2万字弱あり、ストーリーをかたちづくる三幕構成の説明、その応用について述べます。 【0 ストーリーはどのように構成されるか】 本稿では、物語・ストーリー・ドラマを僕らはどのように受容し…

『ソウルイーターノット!』最終話:OPには、実はストーリーの結末まで描かれていたこと

『ソウルイーターノット!』12話は最終回、観ました。今日は七兎(@vastblue710)に教えてもらった、OP映像には最初から、本作の結末までが描かれているという話を、最終話に絡めて書いています。

『ソウルイーターノット!』第10話、フレーム内⇔フレーム外の緊張感

『ソウルイーターノット!』第10話「悪夢のはじまり!」は今期のベスト話数のうちの1本。 オムニバス形式で軽い調子の第9話「カボチャ、グローウィン!」から一転し、ダークな雰囲気で進行する第10話は、他の話数との演出的な落差で強い印象を残しました。今…