あにめマブタ

@yokolineのアニメ記事がアップロードされます

『ソウルイーターノット!』最終話:OPには、実はストーリーの結末まで描かれていたこと

ソウルイーターノット!』12話は最終回、観ました。今日は七兎(@vastblue710)に教えてもらった、OP映像には最初から、本作の結末までが描かれているという話を、最終話に絡めて書いています。

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『ソウルイーターノット!』第10話、フレーム内⇔フレーム外の緊張感

ソウルイーターノット!』第10話「悪夢のはじまり!」は今期のベスト話数のうちの1本。
オムニバス形式で軽い調子の第9話「カボチャ、グローウィン!」から一転し、ダークな雰囲気で進行する第10話は、他の話数との演出的な落差で強い印象を残しました。今回はこの話数の中でも、特に気付いた部分について、話したいと思います。(ちょっとだけ12話の話もします。)
(特に断りがない場合、画像は第10話からの引用です)

<第10話メインスタッフ>
脚本:森江美咲、橋本昌和
絵コンテ:松尾衡
演出:鳥羽聡
作画監督:堀川耕一、松田剛吏、藤巻裕一

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『ソウルイーターノット!』第4話のキャラ芝居がカルマ深かった話

こないだ『ソウルイーターノット!』について話していたら、@mitomuse が「第4話の芝居カルマ値高かったよね」と言うので詳しく聞いた。
それが一番最初のポストなんだけど、ちょっと思い出せなかった。でも実際にキャプチャ取りながら観てみたら、これなんかすごいことやってる。

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漫画原作のアニメ化にまつわる原理的な問題 ~『ソウルイーターノット!』の洗練~

みなさん、『ソウルイーターノット!』観てます? 観ましょう。
TVアニメ『ソウルイーターノット!』公式サイト
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このアニメ、視聴を続けていくと絶対「アレ?」って思うはずです。
なぜかって、本作は明らかに面白いのに、どこが面白いのかわからないからです。

ただ漫画原作の描写と、アニメ上でなされた表現を読み比べていくことで、
本作が「漫画作品のアニメ化」にあたってどのような戦略をとり、
それがどのように画面に反映されているのかが
段々とわかってきました。

この記事では、本作が面白い3つの理由を、原作と比較検討しながら、
「なぜここは原作と違っているのか」を考えます。
その中で、「アニメ化」という行為でアニメクリエーターが
何をしているのかが、少しずつ見えてくればいいなと思います。

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「赤いリボン・目玉焼き・渡り廊下」という『まどマギ』レビューを書きました

(追記:2014/4/29付の記事を間違えて消してしまったので、バックアップから再投稿しました。2014/6/1)
洲崎西大好き、ヒグチです。

5/5に開催される文学フリマにて、
魔法少女まどか☆マギカ』に関するレビューを書きました。
タイトルは下記のとおり。

  赤いリボン・目玉焼き・渡り廊下
   ~『魔法少女まどか☆マギカ』の構造解析~

今『まどマギ』について書くなら、普通はこないだBlu-ray Discが発売された
『劇場版新編 叛逆の物語』について書くべきなのかもしれませんが、
今回は少し視点をずらして、基本的にはTVシリーズについて書いています。
しかも、注目するのは第1話Aパートです。

ちょっと内容について書きます。
物語には、作り手が伝えたい「テーマ」があるといいます。
そう言われますが、じゃあテーマを僕ら受け手はどのように知るのか、
ということは特に気にしたりしません。

ただし、テーマというのは僕らがそこから感じた感想が全てなのかというと、
それは、違うんではないか。
テーマにも、きちんとそれを分析するためのやり方はあるんでないのか。
ということを、僕は今回の文章でやりたかったのです。

今回『まどマギ』のストーリーを分析するにあたって、とった方法が次のようです。

<方法1:何気ないシーンが存在する理由を考える>
キャラクターにも人生があります。朝起きて、どんな服を着て、何を食べるか。
一分一秒を全て、ストーリーに組み込むこともできるでしょう。
ただ、そんなことはない。

もし赤いリボンをつけるシーンが「存在する」ということは、
作り手には、そこを特筆すべき理由があったはずです。
もし目玉焼きに関するシーンが
何度も、同じように登場するとしたら、
そのシーンは何か、特別な意味を持っているのではないか。
渡り廊下はどこで登場した?

それは、たとえば実際の脚本のト書きやセリフに注目することで、
特別な関係性をかたちづくる、
物語を構築する材料を見つけることはできないだろうか。

これがひとつ。

<方法2:テーマは反対意見に応えなければならない>
もうひとつは、もしテーマとは「作り手の主張」だとしたら、
物語の中にはその主張に対する「反対意見」が登場するはずだということです。

もし第1話で主人公が掲げた主張がそのまま難なく最後まで通ってしまったとして、
それは本当に強い意見でしょうか。
僕らが鑑賞中に抱く
「あれ、でも○○の場合は、その主張を通すのは難しくなるぞ?」と
いう不埒な考えは、物語内で払拭される必要があります。

主張を強めるのは、反対意見に対しての反論です。
であれば、テーマと思われるものに対する反論、対となって現れるものは、
その作品のテーマである可能性が高いのではないか。

これが2つ目です。

まどマギ第1話 Aパートには、その全てがある>
本作第1話のAパートには、上の方法1および方法2を確認するための、
全ての材料が揃っています。

Aパートに登場するものを、要素の属性ごとに分類し、
関連するものと比較したとき、
まどマギ」にも、テーマと思われるものが浮き上がってくるように思います。

重要なことは、「魔法少女となること」と「変身すること」は
必ずしもイコールではないということです。

ご興味を持っていただけましたでしょうか。

今回の文章も20000字超あります。
わかりやすく親切で、誤解の余地がなるべく少なく、
かつエキサイティングなものになるよう、心がけました。
よろしくお願いします。

今回の文章が載っている冊子が頒布される文学フリマ
当日の詳細は以下の通りです。

<第18回 文学フリマ
開催日 2014年5月5日(月祝)
開催時間 11:00~17:00
会場 東京流通センター 第二展示場
アクセス 東京モノレール流通センター駅」徒歩1分
公式サイト  http://bunfree.net/

ブース Eホール(1F)C-34
載っている冊子 「多重要塞 第2号」


以上です、当日は午前中など、ヒグチも売り子してます、
声かけてくださいー

※取り置きなどもしますね

グズつかない技術「時間割引率」のこと

 行動経済学には「時間割引率」という考えがあるそうだ。僕は佐藤優さんの『人に強くなる極意』という新書でこれを知ったのだけど、とてもタメになる話なので共有したい。

時間割引率 = 時間による価値の目減りの割合

 時間割引率とは次のようなものだ。

 10000円を自分の口座に振り込んでもらえるとする。それは今すぐしてもらうこともできるが、一週間後にいくらか増やしたうえで振り込んでもらうこともできる。たとえば、一週間後に11000円振り込んでもらえるなら一週間待とうというAさんがいる。
 一方、13000円くらいにならなければ、とても一週間も待てないというBさんがいるとしよう。

 Aさんにとってお金は、今すぐの10000円と、一週間後の11000円は、同じくらいの価値がある。これは一週間という時間が、当初から9%ほど、お金の価値を目減りさせているとも考えられる。時間によって何かの値段が下がる、価値が割引かれる歩合、これが時間割引率だ。

 一方Bさんに対して同じように計算すると、一週間で目減りするお金の価値は23%。このように、時間割引率は人によっても異なる。AさんよりBさんの方が、より時間的に近いところにあるお金のほうが価値があるのだから、Bさんは自然、Aさんより浪費家に見えるだろう。

時間割引率をリスクの見積もりに応用する

 上の例では利益の価値が目減りする例について話したが、逆に、負の面つまりリスクの評価についても同じことが言える。ここで比較されるのは、今すぐに決断する際のリスクと、そして決断を引き伸ばしたことによって生じるリスクだ。今回はここに注目したい。

 決断を下すのは怖い。これは人の性であり仕方がないと佐藤氏も言う。しかし、物事の中には、決断を先送りすることによってリスクが増大していくものもある。ここでも時間割引率の考えが応用できる。

 未来のある時点で、これから増大したリスクが、現在決断することのリスクを上回る瞬間に、人は決断することができる。
 たとえば、電気料金の支払いを怠っているうちに、このままだと電気を止めると連絡がきた。たとえばAさんはここで、コンビニで電気料金を支払ってしまうことの面倒くささと、今はまだ具体化していない危険であるものの、着実に増大しつつある、いざ電気を止められてから手続きをする面倒くささを秤にかけて、後者の面倒くささが勝った。Aさんは支払った。

 しかしBさんはまだ支払っていない。BさんはAさんよりも時間割引率が高いため、Aさんよりも未来のリスクを過小評価しているのだ。
 このように考えると、BさんはAさんより、未来の約束や集合時間に対して、ルーズに見えるだろう。

決断のタイミングの早い/遅い

 このように、時間割引率の考えをとると、人によってどうして行動の早さや優先度に違いが出てくるのかわかるだろう。
 もちろん、ギリギリまで状況を見極めてから行動したほうがいいこともある。敵が遠くにいるうちに、プレッシャーに負けて引き金を引いてしまい、射程距離に入ってきたころには弾を撃ち尽くしてしまっていては元も子もない。

 しかし多くの場合、決断は遅かった時のほうが後悔は大きいはずだ。

決断が遅すぎる場合の2パターン

 結果論で言えば、決断が遅すぎた場合の原因は、次の2つしかない。

 ひとつは今現在のリスク評価が高すぎることだ。決断することのリスクが高すぎると、それに釣り合うまで決断は引き伸ばされ、結果的に未来で支払うことになるリスクが高くなる。

 ふたつめは、未来のリスク評価が低すぎることだ。時間割引率が高すぎるため、未来のリスクは過小評価、あなどられることになってしまう。

 しかしこのどちらも、今現在見えているものに対する評価が、未来のそれに対する評価に対して、高すぎる・バランスがとれていないという意味では共通している。

決断することの不可避の不安

 決断するのが怖いのは、未来を見据えて検討するということ自体が、不安を生むからだ。

 たとえば僕らは決断を保留しがちだ。しかし、一週間後の自分は、今日の自分が判断を保留したことを恨むかもしれない。
 時間割引率によって価値が下がっていく対象は、実は、自分自身も例外ではない。少し先の自分を、現状より少しでも大切にしてやることで、僕らは「判断しそこなった」という後悔を減らすことができると思う。

参考資料:

嵐と火刑~TV版『魔法少女まどか☆マギカ』OP/EDの比較~

0.はじめに

魔法少女まどか☆マギカ新編 叛逆の物語』超よかったですね。

ただ今回は『叛逆』については少し忘れて、
TV版のOP(オープニング)とED(エンディング)について書きます。

2011年の1月放映ですから、もう丸3年経つんですね。
以降、TV版本編についてはネタバレして話しますので、
未見の方は、ぜひ本編をご覧になってから読んで頂けると嬉しいです。
(今回は『叛逆』についてはネタバレしません。)

1.TV版OP/EDは対照的に描写されている

魔法少女まどか☆マギカ』TV版といえば2011年1~3月に放映された
オリジナルTVシリーズアニメです。
衝撃的な展開と圧縮されたストーリーが印象的な本作ですが、
その洗練された演出にも特筆性があります。

そのひとつとして、OP/EDムービーを挙げます。
OP/EDは、作品全体を受けてスタッフが作成した、
イメージムービー、もしくはプロモーションビデオのようなもので、
作品が提示するイメージや皮膚感覚を各90秒に表現します。

本放映では1話から流されたOP『コネクト』、および
展開が急加速する3話から流されたED『Magia』については、
お互いがお互いの描き方を参照するように、
つまり対照的に本作のイメージを描いているように思います。

この文章では具体的に、OP/EDの描写の共通点・相違点から、
その表現を考えます。

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