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『SHIROBAKO』の音響演出について寄稿しました(アニメクリティーク新刊(C88))

アニメ批評同人誌「アニメクリティーク」に寄稿しました

明日、8/14(金)に開催される、第88回コミックマーケット(1日目)のスペース東フ36aにて、
アニメ批評同人誌、アニメクリティークの新刊
『アニメクリティーク vol.3.0 特集 蟲・生物・人工物/アニメにおける〈音〉』が頒布されます。

今回、この本の第2特集である「アニメにおける〈音〉」に、
TVアニメ『SHIROBAKO』の音響演出について、5000文字の論評を寄稿しましたので、お報せします。

目次と詳細については、主宰のNag_Nayさんの記事をご覧ください。
f:id:yoko-sen:20150813232134j:plain
nag-nay.hatenablog.com

寄稿した論評の狙いと概要

キャラクターの生まれる渚
~『SHIROBAKO』の映像・音響演出~

今回は、上のように題して、アニメ制作を題材にしたTVアニメ『SHIROBAKO』のキャラクター表現について、
「音響演出」を足掛かりにして、本作の面白さを伝えることはできないかと考えました。

『SHIROBAKO』というアニメは、アニメ制作を題材にするがゆえに、アニメの中でアニメが制作される、つまり作品の中で別の作品が進行する作品です。
更に、作中作というフィクションの出来事が、アニメ制作をしている主人公という現実側ににじみ出してくるような事態さえ、しばしば起こります。

この文章では、特集「アニメにおける〈音〉」に寄せて、アニメキャラクターを「絵」と「音」が統合された表現として、まずは考えます。
そのうえで『SHIROBAKO』では、本来はきちんとひとつに接合されているはずの「絵」と「音」が、意図的に崩され、組み替えられるような、特徴的なシーンがあることを指摘する、というのが序盤の流れです。

そんな本作を象徴するような表現が、特に伺える部分として、
第3話「総集編はもういやだ」より、シーン1:木下誠一の妄想飛行、シーン3:宮森あおいの一人芝居
第17話「私どこにいるんでしょうか…」より、シーン2:PVの完成と花火
第23話「続・ちゃぶだい返し」より、シーン4:坂木しずかのアフレコ
の計4シーンを具体的にピックアップしました。

これら「絵」と「音」の本来的な接合のずらしは、作中では段階的に立ち現れることになります。
まずは序盤、作中の現実のなかで、主人公をはじめとしたアニメ制作者たちのあいだに。
そして終盤では、主人公たちと、僕ら観客とのあいだに、つかの間に成立するプライベートな関係性として表現されます。

じっさい、僕らの「フィクショナルなキャラクターの存在を共有する」という営みは、実は非常にへんてこなものです。
その小さなこわれものが、揺らぎながら生まれる瞬間を、本作は、活き造りのように切り取ってみせます。
僕はそういう本作の側面を、タイトルに挙げた「キャラクターの生まれる渚(なぎさ、みずべ、みずぎわ)」という言葉を使いながら、その一端を表現できればと思いました。

今回は、Nag_Nayさんの豊かな示唆を受けながら、丁寧に書きました。
ぜひ、皆さんに読んで貰えればと思います。
明日はよろしくお願いします。

本日は以上です。