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あにめマブタ

@yokolineのアニメ記事がアップロードされます

『BROTHERS CONFLICT』EDのとんでもない仕掛け?


『ブラコン』の、新しい面白さ

今回は『BROTHERS CONFLICT』、『ブラコン』の話です。
TVアニメ『BROTHERS CONFLICT(ブラザーズ コンフリクト)』 公式サイト

冒頭で引用しました幾原邦彦さんの言葉どおり、
どうやら本作のエンディング(ED)映像には、
「とんでもない仕掛け」が、第1話の時点から
仕込まれていたことがわかりました。

ここでは、その仕掛けが、一体どのようなものだったのか、
そしてそれがどのような意味と効果を生んでいるのかについて、
実際の画面のキャプチャー画像を交えて、
考えてみようと思います。

『ブラコン』の、基本構造

実際の映像のギミックについて考える前に、
『ブラコン』ってどういうアニメなのか確認しましょう。

f:id:yoko-sen:20130907182141p:plain
上の相関図(上記公式サイトより)を観ていただければわかる通り、
本作は一種の「逆ハーレム」ものです。
※言うまでもなく、この矢印はいくつか省略があります。

父親の再婚をきっかけに、
13人もの男兄弟ができた主人公の女子高生「絵麻」は、
あくまで「家族」として兄弟たちと
接して、暮らしていくんですが、実は相手側はそうではない。

上は31歳の医者、下は10歳の小学生まで、
昼夜に渡り言い寄られ続けるのを、
主人公は毎話数、かわしまくります。

主人公はこれまで父親とふたりきりで暮らしてきたため、
大家族の暖かさや、その気の置けない関わりあいに憧れています。

そのため、誰かと特別な関係に陥ることで、
この新しくも大事にしていきたい家族が、
ギスギスしたり、離れ離れになってしまうことを恐れています。

実のところ、兄弟の誰かと恋人同士になることは
あまりにも簡単です。
それは第1話を観てもらえれば一目瞭然なのですが、
主人公の望みはあくまで、そこにはない。

父の仕事の都合で
小さいころから一人で家で過ごすことの多かった主人公が、
自分が得られなかった「みんなで過ごす家族」の中で、
どのように自分の居場所を選び、占めていくのか?

(主人公の趣味は意外にもカプコンビデオゲームなのですが、
 それは恐らく、小さいころから一人遊びが多かったからでしょう。)

主人公はあくまで「誰とも恋をしない」をつらぬき、
特定の誰かとのハッピーエンディングをすり抜け続けることで、
その向こう側に、本当のトゥルーエンドを探しているのではないか。

そんな構図を伝えるように思われるのが、
オープニング(OP)の次のシーンだと思います。
※以下、画像は全て第9話より引用

<赤い光が、主人公の足元に円を描く>
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<足元の円から伸びた線は、兄弟たちの線の集まりに接続される>
f:id:yoko-sen:20130907190855p:plain

<主人公は兄弟たちの間をすり抜け、誰も立っていない場所へ向かって走って行く>
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実は「家族を作りなおす」って、最近になってから
非常に多くの作家が考えている重要モチーフだと思って注目しているんですが、
本作もその流れの中で、
なんかすごくハッとさせられる描写があるんですよね。
とても面白いです。

※言い忘れないうちに言っておきますと、
 本作のOP・EDは映像・曲ともに高レベルで
 素晴らしいものに仕上がっていますので、
 ぜひご覧になってください。
(なお、EDは第2話以降に完成版が観られます。)

<第1話>

『ブラコン』のEDはどこで撮影されたのか?

本題になります。

『ブラコン』のED映像は、全編が兄弟たちのダンスです。
非常にポップで、勢いのある映像ですが、
その裏に、映像的な仕掛けがありました。

歌・ダンスが披露されるのはどうやら、屋内スタジオのようです。
いったいここはどこなんでしょうか?

いや、アニメに登場する場所に対して
「ここはどこなのか」というのは全くおかしい話なんですが、
実はここがどこなのかについて、ハッキリ分かる描写があります。

以下の画像を見てください。
彼らが踊っている後ろには、屋内スタジオのライトや支柱が並んでいます。

これは何か。明らかにダンススタジオや何かではなく、
実写ドラマの撮影を行うような、一種の撮影セットですね。

<撮影セット①>
f:id:yoko-sen:20130907205318p:plain

ではこれは? どうやら支柱やライトと、そしてキャラクターとの間に、
何か大道具というか、場面転換のためのボードのようなものが
移動していくのが見えると思います。

<撮影セット②>
f:id:yoko-sen:20130907205534p:plain

答えは本編の劇中にありました。
以下の画像を見てください。

<リビングルーム壁面②(西側・幾何学壁)(撮影セット②と対応)>
f:id:yoko-sen:20130907211827p:plain

これは本編で、兄弟たちが一緒に住んでいる吉祥寺のマンションの
リビングルームの一角です。
以下の画像を見れば分かるとおりすごく豪邸なんですが、
これだと画面左側の一角が、上記2枚と同じく、
幾何学模様の特徴的な壁面になっているのがわかるでしょう。

<リビングルーム壁面②(西側・幾何学壁) 外観>
f:id:yoko-sen:20130907212803p:plain

同じように、リビングルームの3方向の壁面が、
バラバラのパネルというか、書き割りとなって、
運ばれているわけです。

光のよく差し込む窓ガラスの壁面を南側と仮定すれば、
キッチンに面したこちらは北側の壁面です。

※ちょっと確認しにくいですが、詳しい検証は本編で!(汗)

<リビングルーム壁面①(キッチン・北側) (撮影セット①に対応)>
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続いて最後の壁面。

<リビングルーム壁面③(大窓・南側) (撮影セット③に対応)>
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↑の画像では見切れていますが、ライトが天井からぶら下がっている部屋なんです。

撮影セット③
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つまり「EDはどこで撮影されていたのか」という答えについては、
「リビングルームの真ん中」ということになります。

しかも、ただのリビングルームではありません。
このリビングルームは地上数階の空中にある設定なのですから、
そもそも、劇中のリビングルーム自体が、
フェイク、つくりものの撮影スタジオだったということです。

と考えると、本編とEDとの関係は次のようになります。
20分程度の家庭内恋愛ドラマが終わると同時に、
登場人物たちがいつも暮らしているリビングルームの壁は取り払われ、
撮影セットが顔を出します。
つまり本作自体が、実写で撮影されたドラマだったということになるでしょうか。

兄弟たち(いや既に本当の兄弟なのかどうかも疑われるのですが)は
ドラマを撮影していたときの服装のままで踊り出します。

ダンスの前半で撮影セットは完全に解体、
3方からカラフルな七色のダンスステージがまたたく間に構築されます。
f:id:yoko-sen:20130907220959p:plain

僕はこれを観て、正直「とんでもない仕掛けだ」と思いました。
クリエイターさんたちは、これをどういう意図をもって作ったんでしょう?

(2013/09/08 13:00追記)
2つ前の段落で「撮影セットが解体」と書きましたが、
これらの撮影セットはダンスの裏を流れていくうちに、
窓ガラス部分がステンドグラスのように、
七色のガラスに変わっていく様子がわかります。

ということであれば、撮影セットが解体というより、
「撮影セットが変化して、
 七色のダンスステージを生み出した?」とも
考えられるかもしれません。
f:id:yoko-sen:20130908130404p:plain
(追記ここまで)

『ブラコン』EDについて、もっと考える

これを作った人たちについて話します。
本作のED映像の絵コンテ・演出には、
少女革命ウテナ』『輪るピングドラム』監督の幾原邦彦さん、
そして幾原さんの作品にも深く関わり、
幾原さんを「おっちゃん」と呼ぶ(?)古川知宏さんがいます。
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※このお二人が組んだお仕事には『ココロコネクト』の第3エンディングがあり、
 これも象徴的で、かつパワフルでエモーショナルな映像になっています。
 正直、ド傑作です。

嬉しいことに、古川さんからこの劇的な演出について、コメントを頂けました。

他にも、リスのジュリがボックスステップを踏んだり、
「近寄るな!」と発光する部分については、
古川さんがアイデアを出したというお話も、
なしれいさんと交わされています。

f:id:yoko-sen:20130908002008p:plain
お話を伺うと、お二人の間で、映像自体のアイデアから、
カットごとの仕掛け・部分的な振り付けまで、
相談しながら決められていったようですね。

『ブラコン』EDは、どう解釈すればいいの……?

とてもアバンギャルドな映像だと思います。
アニメのフィクション性をすごく強調していますし、
それが逆に、キャラを演じている生身の人間がいるのかも?
という妙なリアリティも生んでいます。

これを観て、みなさんはどのように感じたでしょうか。
たとえばリビングルームが解体されるというイメージから、
家庭崩壊を想起される人も多いと思います。

僕は、本作自体が
「各業界の美男子が全員兄弟だったら」という
シットコム風アイドルラブコメ実写ドラマである
という想定もできるんじゃないかと思いました。
(海外ドラマの『フルハウス』みたいなやつです。)

ちょっと違う方面から話をすれば、
映像作品の最後で、舞台の書き割りや撮影セットが
登場したり、解体されたりする、という作品がいくつかあります。

たとえば、
さきごろ亡くなったある劇作家の手がけた、
ある有名でシニカルな映画の最後は、
部屋のセットがいきなり崩れ落ちて、
撮影セットが丸出しになり、
登場人物が勢ぞろいします。

また、幾原さんも非常に影響を受けている
劇作家の作ったある映画も、
狭い部屋の四方の壁と思われていた書き割りが
崩れ落ちるとそこは……という終わり方をします。

ただ、僕らにとって最も親しいものは、
日テレ制作の実写ドラマ『女王の教室』でしょう。
(実際の映像を観て頂けるとありがたいです。)

天海祐希さんが小学校の苛烈な女性教諭を演じた
女王の教室』エンディング映像は、
毎話数、次のような型破りな終わり方をします。

本編が終わると同時に、冷酷な顔つきから一変、
笑顔で撮影スタッフに挨拶をした天海祐希さんが、
ドラマのセットが解体される中を軽やかに歩き抜け、
更には、撮影セットの置き場所になっている校庭で、
登場人物たちとEXILEの楽曲に合わせて
ダンスを始める、というものです。

このような仕掛けは、まず第一に、
本編で行われていたことが実際は虚構の出来事、
フィクションであったと視聴者に伝える効果があります。
→確かに、13人もの兄弟が一度に出来るというのは、
 現実的にそう多くあることではないでしょう。

次に、本編に登場したキャラクターと、
それを演技していた役者とが、同時に、
同じ容姿で存在しているということを改めて教えます。
→アニメは実際の身体を使って演技している人間はいないわけですから、
 アニメのキャラクターは、そういう二重のフィクショナルな身体性を
 獲得することになるでしょう。

ここまで考えてきましたが、
実はこの映像演出が本当は何を意味するのかについて、
はっきりとした考えを、僕は持っていません。

とはいえ、クリエイターさんがこれを使って意図したものはあるはずです。
それは今後の本編の展開や、ファンブックのインタビューで
もしかしたら語られるかもしれませんし、
もしくは語られないかもしれません。

僕も考えますので、これを読んだ方も、
思うことがあれば、コメントやTwitter
教えていただければと思います。

本題は、以上です。

最後に、ハーレムものの主人公について考えたこと

ほとんどの兄弟たちは、先に挙げた
吉祥寺の巨大マンションに住んでいるんですが、
そのラインナップがすごい。

医者・弁護士・小説家に始まり、
美容師・ゲームクリエイター・アイドル・声優…などなど。

キャラの立った男どもが主人公にベタ惚れしてくんですが、
尺の都合上、だいたい1話につき2人のペースで落とされます。

あと、アバンタイトルで出てくる兄弟は、その話数で
だいたい主人公が落としますね。(予告ホームランみたい)
あと強引なキスされまくり。
(リスのジュリが散々警告しているのに……。)
別に主人公にその気は全く無いのにもかかわらずです。

ただそういうバタバタした生々しい流れなのに、佐藤利奈さん演じる
主人公の絵麻に対して、
(劇中で名前は呼ばれません。
 同時展開しているノベルゲームの主人公でもあるからでしょうか。)
なぜかイヤな感じは受けないんですよ。

流されやすいし、ハッキリ意思表示もしないのに、
なぜかすごい好かれるというキャラで、
なんというか、
女性向けノベルゲーム(乙女ゲーってやつです)ものの
主人公の造型ってすごく考えられているんですよね。

※『AMNESIA』の主人公も良い子だったな。
逆に、男性向けのハーレムものだと、
これだけ好感の持てる主人公って、
これはゾンビですか?』シリーズの相川歩しか
知らないです。
キャラクター紹介 - これはゾンビですか?アニメ公式サイト

となると、やっぱりハーレムものって、
主人公がどれだけ人として魅力があるかだと思うんです。

たとえば女性がたくさん主人公に惚れるんなら、
それを観ている男性の視聴者に、
この主人公は、あれだけの女の子に惚れられる
理由があるなと、序盤で説明する必要があるんですよ。

これが、女性向けの作品なら、逆。
ってことは、まず主人公と(多くは)同性の視聴者に、
彼/彼女という主人公を、
応援したいと思わせなければならないのではないでしょうか。

言い換えると、
恋愛の対象キャラより前に、
視聴者を主人公に惚れさせる必要があるわけです。

今や非常に広く・若くなったアニメ視聴者にとって、
魅力的な友人としての主人公を造型するのには、
多分難しいことだと思います。

それは、恋愛の対象キャラは複数用意することができるけど、
主人公は物語に一人しか登場させられない、という
シンプルな理由もあります。

体感的には、主人公は
加点方式ではなく、減点方式で評価されるのですが、
失点を重ねずにバランスをとるのが、
本作のような女性向けアニメは、
とても上手いと思いながら観ています。

さて、本編も佳境に入った『ブラコン』ですが、
登場人物たちの秘密が明らかになり、
主人公は兄弟たちとどのような関係性をつくっていくのか、
そろそろ決めるべき時間が迫っています。

僕はシリーズ構成の高橋ナツコさんのデリケートな構築が
好きなんですが、そういう意味でも、
ストーリーがどのような着地を見せるのか、
とても注目しています。

本日は以上です。