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アニメ作画のキャラ芝居・日常芝居を楽しむ ~『アイカツ!』~

作画をゆるーく楽しむ

 前回の記事では、『アイカツ!』第89話「あこがれは永遠に」を題材に、脚本(会話劇の面白さ)について「ゆる見」をしてみた。

 アニメを「ゆる見」するというのはつまり、「この脚本は誰が書いた」「このカットは誰が描いた」という、いつものアニメファンの見方から少し離れて、「どこのどういう部分がこんなふうに良かった」という感想を、少しずつ具体的な言葉にしていくことだ。

<前回の記事>

 前回、「脚本」と「作画」は非常に語りにくいファクターだという話をした。なぜなら、脚本も作画も、完成品に対して複数人が手掛けていることが多いからだ。たとえば脚本は、監督たちスタッフを含めた複数回の脚本会議でブラッシュアップされたあと決定稿となるが、後続工程の絵コンテ・演出で修正・加筆されることも多い。

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アニメの脚本を「ゆる見」する。『アイカツ!』89話

脚本と作画をゆるく楽しむ

アニメについて話していると、最も話題にしにくい2つの観点が「脚本」と「作画」だったりする。
この2つは明らかに重要な要素なのに、それがどんな風にすごいのかを話すための便利な言葉を、僕はあんまり持っていない。

今回は、その2つの要素、脚本と作画を「ゆる見」したい。
誰々が書いたから脚本がどう、誰々が描いたから作画がどう、という話ではなくて、どういうところが良かったという感想を、ゆるーい目線で話せないだろうかという話だ。
(僕が詳しくなくて、マニアックな話が出来ないということもあるけども。)

今回は、2年目も佳境の『アイカツ!』から、すごく感動した話数があったので、この記事では脚本を「ゆる見」したいと思う。

脚本1:マヤとユリカの会話

アイカツ!』89話「あこがれは永遠に」は、メインキャラの1人、藤堂ユリカにクローズアップするエピソードだ。
そもそも『アイカツ!』は、学園生活を送る個性的なアイドルたちが色々な「アイドルカツドウ」を続けていく、既に放映開始から2年が過ぎようという長寿シリーズ。中でも藤堂ユリカは自身を「吸血鬼ドラキュラの末裔」と名乗り、バンパイアキャラを売りにアイドル活動を続ける、ちょっと変わったアイドルだ。

これまでもユリカをフューチャーしたエピソードは幾つかあったが、印象的なのは、ユリカのスキャンダル回だ。吸血鬼キャラで通っているユリカも、普段は黒ぶちメガネの冴えない女の子。それを雑誌に書き立てられたことで、ユリカもかなり苦しんだことがある。(もちろん、このシリーズのことだから、あまりえぐい描写ではないのだけど。)

次から始める引用は、握手会で小さな女の子に「どうしたらユリカ様のように強くなれますか?」と真剣に訊かれたユリカが、とっさに答えてあげることができない、というシーンの直後から始まる。沈んでいるようなユリカに、ユリカと専属契約しているファッションブランドのデザイナーが、とつぜん声をかけてくる。

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(物思いにふけるユリカ)

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『ラブライブ!』1期のストーリー構成分析(映画脚本の観点から)

※以下、同人誌に掲載した文章の再録の後半となります。後半は7000字で、前半で確認した三幕構成の要素を応用し、『ラブライブ!』1期のストーリー構成について分析します。
前半:30分でエッセンスを掴む! ストーリーの黄金率「三幕構成」 - あにめマブタ

<前半からの引き継ぎ資料>
*ストーリー構成のメソッド「ビートシート」
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*ビートシートをもとに描いた感情曲線の模式図
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【24 TVシリーズアニメ『ラブライブ!』の三幕構造

 最後に、三幕構造の分析を実践しよう。ここでは2013年に放映されたアイドルアニメ『ラブライブ!』のストーリー構造を、ビートシートおよび三幕構成に当てはめて分析する。分析の都合上、結末までのストーリーを割って話すことになってしまう。もし本作を未見のまま、この先を読んでしまうと、実際の視聴時の楽しみを削ぐことになってしまうことが予想される。申し訳ないが、気を付けてほしい。
 『ラブライブ!』は2013年1月より各局にて放映された、全13話(約3ヶ月=1クールで放映)から成る、TVシリーズアニメ作品である。本作は、9人の女子高生が、学校に所属するアイドル「スクールアイドル」として活躍することで、自身の通う高校の廃校を防ぐため奮闘する物語だ。本作ではほぼ全話を、シリーズ構成の花田十輝氏が担当した。(第10話では子安秀明氏との共同脚本。)また原案は存在するものの、アニメでの展開はほぼオリジナルであるため、脚本分析に適していると考える。
 本作はメリハリの利いた脚本と、逆に終盤の深刻な展開に「誰得シリアス」(「このシリアスな展開は誰が得するんだ。(もっとお気楽な展開を望んでいるのに。)」)という批判を少なからず受け、視聴者の反応は大きく二分されることとなった。結果的に一般的なヒット作の4~5倍の映像パッケージを売り上げる、2013年の大ヒット作品となった本作だが、今回の分析を通して、何が本作の視聴者の反発を招いたのか、そしてその人気の秘密とは何だったのか、いくらかのヒントを見つけることができるかもしれないと考える。

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30分でエッセンスを掴む! ストーリーの黄金率「三幕構成」

※以下、同人誌に掲載した文章の再録の前半となります。前半は2万字弱あり、ストーリーをかたちづくる三幕構成の説明、その応用について述べます。

【0 ストーリーはどのように構成されるか】

 本稿では、物語・ストーリー・ドラマを僕らはどのように受容しているのかというメカニズムを追う。このメカニズムを追うことで、どのようなストーリーが、いや先んじて言ってしまえば、どのような構成をとったストーリーこそが、多くの観客の関心を惹きつけるのかを、明らかにする。
 これにあたって、僕はアニメ映像が好きなので、TVシリーズアニメ作品を、映画脚本の構成理論をもとに説明することにする。これによって、最近にストーリーに関して話題を取った作品『ラブライブ!』に関する分析を行うことができる。※追記:こちらは別記事で行います。
 なお、ここで行う分析は、いくつかの物語の類型のうちのひとつについてのものであり、あらゆる物語がその通りであるわけではない。しかし僕らが考えるよりずっと多くのエンタテインメント作品が、この構造を採用している。

【1 物語が観客に提供できる最大のものは、変化だ】

 なぜ人は物語(ストーリー)の優劣を判別できるのだろうか。
 もしシニカルな人なら、それは優劣ではなく食べ物の好みのように感覚的なものだ、と言うかもしれない。ただ僕らは、大抵のうまい料理人は何を作っても、下手な料理人よりも美味い料理を提供することを知っている。
 つまり僕ら観客は、物語が、最大公約数的な何かを与えてくれることを見越して、期待して、たとえば小説本を書店のレジに持って行ったり、もしくは1800円を映画館の受付に差し出すわけだ。
 最も重要なこと。僕らが物語に期待しているものは何か。それは観客自身の変化だ。
 順を追って話そう。そもそもフィクション、つくりものの世界で何が起ころうとも、僕ら観客には何の関係もない。世界中の人間が死に絶えようが、僕らはそのことで気に病む必要は無い。それはつくりもので、嘘の世界で起こった出来事だからだ。逆に、その世界で得た宝物や金銭も、実際に使うことができない。これも同じ理由だ。
 ではなぜ、そこで起こったことが僕らの実際の生活に何の影響も及ぼさないようなものを、僕らはいくらかの実際の金銭や時間を消費してまで視聴しようとするのか。その理由は、3つある。

【2 物語は観客に、瞬間的なおもしろみを提供する】

 第1に、ストーリーの中で起こっていること、それ自体の面白さ、おかしみである。一文のセリフだったり、数十秒で見せることのできるコントのようなものだ。だがそれは、ジェットコースターの面白さである。僕らはジェットコースターに乗っても、その体験をあとから何度も思い出して、感動を得ることはないだろう。それは瞬間的な楽しさに過ぎないからだ。ストーリーは、面白い出来事の断続的な集合ではなく、面白い出来事の因果関係によって、文脈づいたものとして形作られる必要がある。

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『ソウルイーターノット!』最終話:OPには、実はストーリーの結末まで描かれていたこと

ソウルイーターノット!』12話は最終回、観ました。今日は七兎(@vastblue710)に教えてもらった、OP映像には最初から、本作の結末までが描かれているという話を、最終話に絡めて書いています。

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『ソウルイーターノット!』第10話、フレーム内⇔フレーム外の緊張感

ソウルイーターノット!』第10話「悪夢のはじまり!」は今期のベスト話数のうちの1本。
オムニバス形式で軽い調子の第9話「カボチャ、グローウィン!」から一転し、ダークな雰囲気で進行する第10話は、他の話数との演出的な落差で強い印象を残しました。今回はこの話数の中でも、特に気付いた部分について、話したいと思います。(ちょっとだけ12話の話もします。)
(特に断りがない場合、画像は第10話からの引用です)

<第10話メインスタッフ>
脚本:森江美咲、橋本昌和
絵コンテ:松尾衡
演出:鳥羽聡
作画監督:堀川耕一、松田剛吏、藤巻裕一

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『ソウルイーターノット!』第4話のキャラ芝居がカルマ深かった話

こないだ『ソウルイーターノット!』について話していたら、@mitomuse が「第4話の芝居カルマ値高かったよね」と言うので詳しく聞いた。
それが一番最初のポストなんだけど、ちょっと思い出せなかった。でも実際にキャプチャ取りながら観てみたら、これなんかすごいことやってる。

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